意識の高い総合商社「成幸」【3dayインターンシップ】
ボクの名前は、田中正一。
学生団体Aquosの副会長であり、この夏はインターンシップに5つ出向き、人脈を広げている。海外のスタバでマックだって開いてる。
今回はfacebookで沢山シェアされていて気になっていた大手総合商社「成幸グループ」の3dayインターンシップ!どんな人脈と出会えるんだろう。今日から3日後の9月15日にはどんな自分に成長しているんだろうか?成長痛になるのがとても楽しみだ!
そういいながらボクは未来に目を輝かせ、成幸グループの本社ビル17階に出向いた。そして、これから起きる出来事の顛末をボクはまだ知らないのである。
ー成幸グループ本社ビル17階
本社ビルはまさに大企業の風格そのもの!自分の住む1K45000円の部屋くらいあるのではないかというくらい広いエレベーターに乗り、17階の扉が開くと、そこは庭であった。
よくわからないと思う方が多いと思うので、一言で説明する。「オフィスなのに庭がある」のである。普通であればオフィスには庭がない、常識である。
なぜなら、オフィス=堅苦しい・真面目なものであり、そういった活動をするための施設であるからだ。反対に、庭に対するイメージは庭=安心・やすらぎであり、日頃の疲れを癒すカイテキ空間だ。
つまり、「オフィスなのに庭がある」というのは本来であればあり得ないことなのである。2文字でいえば矛盾だ。つまり、「オフィスなのに庭がある」と言っているのは「清純派AV女優」が存在していると言っているのと同義。
しかし、この相反する2つをあえてくっつけることによりイノベーションっぽさを演出することができる。会社とはすなわち我慢。
先輩の指示とあらばケツマンコにポッキーをINすることも厭わない環境と教えられてきた現代の学生にとって、このような光景はまさに予期せぬHEAVEN、天上の海原。嗚呼、なんという素晴らしきキラキラ具合... こんなところでインターンシップができるなんて...!!誰しもがそう思わざるを得ない光景。まさに僥倖。
受付の看板の指示通りに進み部屋に入ると、同じインターンシップ生だろうか、すでに人が何人か席に座っている。その中でも、ひときわ目立ったのが、黒髪を結んだ佐々木希似の女の子が座っているA席。
ボクは自分の中のこころのちんぽと相談し、迷わずA席に座ることにした。
田中「こんにちは~」
佐々木?「こんにちは~!(*^^*)」
A班その他「こんにちは~」
今思えば、佐々木さんは普通に「こんにちは~」というトーンで喋っているはずだが、そこは性欲絶好調の大学生。相手の営業スマイルを好意と勘違いする逆ファインプレーを魅せていく。
まだ試合すら始まっていないというのに、この胸の高鳴りは間違いなくバブル。日本の1990年代、ギロッポンのディスコで女を侍らせ踊り狂う浮ついた雰囲気を俺は隠し切れない。
落ち着け...こんなことで動揺してどうする...。相手に動揺を見透かされたが最後、格の低い男だと思われ、相手に試合の主導権を根こそぎ持っていかれる...。そもそも俺は1993年生まれだ...。バブルなんて経験していない。
そんな煩悩を抑えながら、インターンシップ恒例の自己紹介をする。いわゆる、大学名、名前、サークル名、今日の意気込みを順々に喋るってやつだ。俺はインターンシップを5度経験した男。このルーティンは既に習慣になっている。
田中「自己紹介はもう終わったんですか?」
佐々木?「そうですね。田中くんでもう一度みんなで自己紹介しましょうか」
田中「あ、なんか気を遣わせちゃったね。ごめん」
男A「大丈夫。じゃあ俺から」
佐藤「慶応義塾大学から参りました、佐藤智治です。サークルは軽音楽で、ボーカルやってます!一応広報部長ってやつもやらせて頂いております。今日の意気込みは、みんなで仲良く特別選考パスを得られればと思っています。よろしくお願いいたします!」
この中にはもうお気づきになった読者の方がいるかもしれない。そう、この自己紹介タイム。今後のインターンシップの主導権争いの鍵を握る上で重要な学歴・経歴のマウンティング合戦でもあるのだ。つまり、闘い(インターンシップ)はすでに始まっていたのだ!
ちなみに特別選考パスが出ることは俺は知らなかったが、大丈夫。これまでも、幾多の学歴ゴッド達と闘ってきたが、そんなことは知らずに圧倒的GD支配力で特別選考パスを貰ったことが何回もある。きっと今回も余裕さ。
ちなみに特別選考パスとは、インターンシップで好成績を収めたもののみが得ることのできる勝利の切符で、大体1次選考がパスされることが多い。
あと、GDはグループディスカッションの略で就活では頻出単語だからみんなも覚えておくといい。
男B「次は僕で」
山本「立命館大学から参りました、山本博文です。あ、博文は伊藤博文と同じ綴りです!サークルは吹奏楽で、トランペットやってます!まあ、趣味って感じです!今日の意気込みは、みんなで仲良く特別選考パスを得られればと思っています。よろしくお願いいたします!」
こいつはきっと論外だ。
何故なら、立命館大学の偏差値は高い学部でも57.5と河合塾の受験対策ホームページに載ってたからだ。偏差値65.0の上智大学に通っている俺様に及ばないゴミだ。
それにサークルで重要なポジションにもいなかったみたいだし、今日の意気込み以下の言葉は佐藤くんの丸パクリではないか。
こいつをうまく利用して今回のGDでも主導権を握っていこう。山本よ、せいぜい俺の引き立て役になって散れ。
そして俺の番だ。
田中「上智大学から参りました、田中正一です。!学生団体Aquosの副会長であり、この夏はインターンシップに5つ出向き、人脈を広げています。まあ、趣味って感じです!今日の意気込みは、楽しくインターンシップができたらいいなと思っています。よろしくお願いいたします!」
決まった。こんな早期にインターンシップに5つも行っている人はいなければ発言している人もいない。これすなわち、このインターンシップの勝利を宣言しているようなもの。勝ち組宣言だ。
しかも今回は普段は言わない「まあ、趣味って感じです!」を加えることにより、余裕を持った男を演出し、佐々木さんに対するアプローチも兼ねた。これで特別選考パスも佐々木さんもゲットだZE!
そして、最後はお待ちかね!佐々木希似の女の子の番だ。
佐々木?「最後は私かな?...はっくしゅん」
場が和やかな雰囲気に包まれる。
「はっくしゅん」
これは、くしゃみの音だ。
しかし、有史以来、こんなにかわいいくしゃみがあっただろうか。いや、ない。
これは天使の福音である。今地上に、天性の癒し力を持つ大天使が降臨した。聖母マリアは日本に存在したのだ。
佐々木?「ごめんなさい(笑) 外寒かったからちょっと...」
田中「大丈夫だよ!体調悪かったら言ってね!」
当然、気遣いも忘れない。
佐々木?「はい!ありがとうございます!じゃあ自己紹介しますね!」
青木「青山学院大学から参りました、青木フェルマー星です。フェルマーはミドルネームで、名前の星と書いてひかりと読みます。サークルは演劇部でたまに歌ったりもします(笑) 足引っ張ってしまうかもしれませんが、みんなで頑張りましょう!よろしくお願いします!」
学歴、サークルでの実績、人脈。
そんなものは圧倒的美貌の前ではゴミ同然である。
我々は佐々木希似の聖母マリアを目の前に相手をしている。聖母の後光と柔和な笑顔。この圧倒的なまでの輝きは、A班を重苦しい陰の世界から解き放ち、軽やかになり、また時間は前後関係を絶ちはなたれて、その時その場が異様に明るく感じられる。
てか、星って書いてひかりって可愛すぎるだろ!!両親ネーミングセンス良すぎかよ
あとフェルマー!おめえだよおめえ!
なんで誰も解けなかった最終定理がミドルネームにあるんだよ!これは私は誰も攻略できませんっていうメタファーなのか?そうなのか星(ひかり)ちゃん!
よぉし!俺が君を最初に解き明かし、君を照らす星(ひかり)になってやる!
そして、成幸グループのインターンシップは始まるのであった。
つづく