ところで私は「寝てない自慢」をするのが大好きだ
もうそれは女のケツを追っかけるよりも三度の飯よりも週末にオナニーをすることよりも何よりも
ボクは人に寝てない自慢をすることが大好きだ。やめられない
我々ホモサピエンスの種が誕生し20万年は経つが、これほどまでに中毒性があり、人を退廃的にさせる行為は「寝てない自慢」以外に知らない。
酒、タバコ、女、麻薬、覚せい剤、アヘン
いわゆる依存性のあると言われてきた旧世代の嗜好品など超越し、ボクは新しい領域、すなわち新世界の嗜好に足を踏み入れた。それが「寝てない自慢」だ。君ら低次元の人間の行うおままごととはまるで格が違う。わきまえろ
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「今回の仕事だるくね?」
「あーわかる。会議で変なこと決めやがって」
「やめてぇよなぁ~」
「なー、転職してー。その前に女抱きてぇ~」
平和だ。あまりにも平和な会話。
このような何の変哲もない会話が繰り広げられている刹那、突如として自慢の爆撃艦載機を発進させ、爆撃を開始する。
「俺、今日3時間しか寝てないんだよね~」
「いや~よくしてくれてる社長が俺のことを離してくれなくてさ~」
「そんで帰ったらやんなきゃいけない勉強をずっとしててね~」
「気付いたら外が明るくなってたよね」
「いや~ごめんね、こんなつまらない話しちゃって~」
完璧なまでの模範解答。東大の2次試験で「寝てない自慢」について述べる問題があれば作問者である私は満点を与えるだろう。そんな天衣無縫な解答にこの私が手ずから解説を示そう
①起
「俺、今日3時間しか寝てないんだよね~」
まず結論を述べる。そして「3時間しか寝てない」という結論はインパクトがあり相手の注意を引く。「どうして3時間なんだろう?」「何か寝れない事情でもあるのか?」
明らかに自慢になる流れになるであろうブッコミを聞いても尚、気になる導入、中毒性。芸人にすらできない話の引きの強さ。だから相手は恐る恐る訊く
②承
「え~?どうして~??」
「いや~よくしてくれてる社長が俺のことを離してくれなくてさ~」
社長とのパイプがある。
しかも何となく仲がよさげで、社長が俺のことを必要としていることがここから読み解ける。しかも「不可抗力で俺のせいじゃない。3時間睡眠は仕方ないんだ。だから自慢しても嫌味じゃないよね?だって不可抗力なんだもん。」という自慢を打ち消す発言の白々しさがまた憎らしい。
そして、会話の奥から匂ってくる
俺は上流階級の人間だぞっ お前ら下級市民とは違うんだぞっ
という階級差を示す自慢。東京が誇る高級住宅街~白金台~辺りで主婦が喋ってそうな内容を下界に卸している。
嫉妬、嫉妬、Shitの嵐である。
そして、最期に畳みかける。
③転結
「そんで帰ったらやんなきゃいけない勉強をずっとしててね~」
「気付いたら外が明るくなってたよね」
「いや~ごめんね、こんなつまらない話しちゃって~」
そう、この俺様は社長に引っ張りだこなレアな人間なのに、家に帰って自分に課した勉強を黙々と行うのだ。朝まで
そして、ここまで自慢で振り切ったならそのまま突っ切ればいいのに、「いや~ごめんね、こんなつまらない話しちゃって~」といういらぬアフターフォローを加え、相手への白々しい気遣いも忘れない。ウザウザが止まらない。仮装大賞のゲージが20点を超え、会場の天井を突き抜ける。ウザウザの宇宙エレベーターの完成である。
④総括
寝てない自慢は楽しい。0円で麻薬を超えるエクスタシーを感じることができる。
特に社長に必要とされているというあたりは何物にも代えがたい快感がある。他のゴミ共より秀でているという優越感、自分が他のやつらよりエラいという表明。その存在、天上天下唯我独尊、唯一無二なのである
でも、仕方ないのだ。大人の世界になれば褒めてくれる人はいない。
「おれはほかのやつよりがんばってるし、すごいんだー!!!」
そう表明したところで、みんな自分のことで精いっぱいなのだ。褒めてくれなどしない。ならばせめて自慢くらいはさせてほしい。自分の頑張りを認めてほしい。そうは思わないだろうか?
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ところでボクは「ショートスリーパー」になりたい。1日45分で睡眠を終わらせ、起きてる時間を成長の時間に使いたい。
あと、「石油王とパイプ」を持ちたい。「石油王と友達」という印籠を振りかざし、愚民共を跪かせたい。靴をぺろぺろ舐めてほしい。
あと、「絶対音感」を持ちたい。階段にわずかに響く靴のかすかな音で本妻か浮気相手かを見極めたい。この階段の音はド♯だから浮気相手だ!とかやりたい。
他の人ができないような特殊能力を手に入れて他と隔絶した力を得たい、超越者になりたい
そんな感じの特殊能力を沢山手に入れて、私はいっぱい自慢をしたい